誰も教えてくれない《姿勢》と《動作》の話

姿勢を変える

愛知県東海市にある現役看護師が運営するフィットネスジム
【BEHAVIOR CHANGE FITNESS(ビヘイビア チェンジ フィットネス):BCF】
代表トレーナーの荒木裕也です。

BCFメンバーさんの中にも自分自身やお子さんの《姿勢の悪さ》や《動きのぎこちなさ》を気にされている方が大勢います。またどうすれば姿勢や動きが良くなるのか、といった質問も非常に多く受けます。

「私猫背なんです」
「反り腰のせいで腰が痛くて」
「生まれつきストレートネックなんです」
「真っ直ぐに走れないです」
「体がふにゃふにゃしてます」


などの声は皆さんも周囲の人から良く聞くのではないでしょうか。
「姿勢改善」を謳った商品や情報はインターネットなどで調べると大量にヒットします。「○○矯正ベルト」や「○○サポーター」などの無理やり姿勢を矯正する方法では、それを使っている時の姿勢は変化したとしても根本的な改善にはなりません。
また「硬くなった筋肉に引っ張られて姿勢が悪くなっている」といった説明も雑誌やTVでよく目にしますが、その筋肉をマッサージやストレッチをしたとしても一時的に筋肉が緩んで姿勢が変化しただけであって、こちらも根本的な解決にはなりません。

ではどうすれば根本的に姿勢や動作は変化するのでしょうか。
結論から言ってしまうと、姿勢と動作を改善(変化)させる最も効果的な方法は

】と【】と【】に刺激を入れた運動

を行うことです。シンプルに言ってしまうと
《『身体』に直接アプローチするのではなく、姿勢や動作を作り出している『脳』にアプローチをしていく必要がある》
詳しく説明していきます。

姿勢の基本

上の図のように、立位を保持するためには重心の投射点(重心からまっすぐ下ろした線が地面と交わる点)が支持基底面(両足とその間の範囲と思って下さい)の範囲にあることが求められます。言い換えると、人は立位を保つために全身のあらゆるシステムを協調させながら常に重心の投射点を支持基底面の範囲内に収めようと無意識に行なっています。
大切なことは、基本的には筋肉で固めて身体を安定させるのではなく、身体の固有受容器と呼ばれるセンサーから得られた情報を元に「姿勢反射」として脳が無意識にコントロールさせていると言うことです。
この「センサー」と言うのは基本的に全身にありますが、姿勢をコントロールするのに特に重要な働きをしているのが実は最初に出てきた【足】と【目】と【耳】にあるんです。
鋭い方はもうお分かりかもしれませんが、いわゆる片足立ちや綱渡りのような「バランス感覚(能力)」もこれらの働きによるものが大きいです。バランス能力を高めるには「筋力トレーニング」よりも「感覚トレーニング」が重要になってきます。更にここから詳しくみていきましょう。

3つの感覚

先ほども述べたように立位姿勢は【足】と【目】と【耳】の3つの感覚情報に基づいて脳によって無意識に調整されています。脳は状況に応じて、これらのどの感覚情報を優先的に使ってバランスを維持するかを常に調節しているのです。それぞれどのような役割があるのかを説明していきます。

①【足】:体性感覚
足底や下肢を中心とした全身からの情報に基づき、支持基底面における身体の位置や動き、全身の協調関係に関する情報を提示します。
足底には多くの「固有受容器」と呼ばれるセンサーが分布しています。このセンサーの働きが悪くなるとバランスが悪くなtたり足首の捻挫などにも繋がります。
余談ですが、足首の捻挫をすると足裏や足首周りのセンサーの機能が低下します。「捻挫がクセになる」と言われる理由として、足首の筋肉が弱くなっただけでなく、これらセンサーの機能が低下してしまうことはあまり知られていません。捻挫の後は必ずリハビリをしてセンサーの機能を元に戻しましょうね。
3つの感覚の内、姿勢のコントロールにおける足の裏の役割は最も重要です。例えば目を閉じて視覚情報が全くない状態でも歩くことはできますが、長時間正座をした後のように足が痺れてしまうと歩くことができません。
BCFがフロアーを人工芝にしたのも、裸足で運動をしてもらうのも、特殊な振動を生み出すパワープレートを導入したのも全ては足の裏からできるだけ多くの感覚情報を入れ、センサーの機能を高めたいという狙いがあるからなんですよ。
まとめると地面を感じることが超重要だと言うことです。

②【目】:視覚
目から入ってくる視覚情報や眼球の運動に基づき、環境と身体の距離関係の情報を提供します。混合されがちですが「視力」と「視覚」は違います。ここでお話しているのは視覚の方です。

「視力(Sight)」とは対象物をどれだけ細部まで見分けられるかの能力のことを言います。
「視覚(Vision)」とは光刺激を受けてその情報を脳が処理した結果もたらされるものを言います(光の方向、物の色、動き、距離など)

視覚の重要性はイメージがつきやすいと思います。目を開いた状態では真っ直ぐに立てるのに、目を閉じるとフラフラするのは皆さんも経験があると思います。また、視覚を含むあらゆる感覚情報は運動を行う為に必要不可欠ですが、特に視覚は人の「移動」の基礎にもなっています。
専門的な言葉で「空間認知能力」と言う言葉があります。これは自分と空間(対象物)の位置関係を把握する能力のことです。空間認知能力は「姿勢」と「動作」に大きく影響してきます。この能力が低いと身体は無意識に【緊張状態】となります。身体が緊張状態になると視野が狭くなり、視線が下を向いたまま腕を振らずに歩いたり、歩幅が狭くなり足を地面にこすりながら歩くなどの特徴が見られます。そんな状態の人に「リラックスしろ!」「前を向け!」と言っても脳がコントロールしている事なので、本人の意思で常にコントロールするのは困難です。こう言ったケースには、その原因となっている「視覚」にアプローチが必要です。実は子どもは、公園の遊具や山や川など自然の中での遊びでこの能力を自然と鍛えているのです。子供の頃の過ごし方が将来の姿勢や運動能力に影響が出ることがお分かりいただけるかと思います。

③【耳】:前庭感覚
重力や加速度を検知して、身体の位置や動きの情報を提示します。
一般の方にも分かりやすいように「耳」と表現しましたが、実際には耳の機能である「聴覚」ではなく、耳の奥にある内耳と言う場所の【前庭器官】のことを指しています。
前庭器官は「三半規管」と「耳石器」と呼ばれる2種類の受容器(センサー)が存在します。これらは頭の傾きや回転運動に反応し、様々な反射を起こして頭の位置や眼球の運動を調整して姿勢を保持しようと働きます。この働きは僕たちが普段何とも感じないような、緩やかな下り坂や微妙な段差など、台風などの風でバランスを崩しそうになった時などでの姿勢の調整の為に常に働いてくれています。その為、前庭感覚の異常はめまいや不安感などのような感覚をもたらし、目の焦点を合わせることやバランスを保持することが難しくなります。

まとめ

「背中が丸い!」
「背筋伸ばして!」
「もっと胸を張って!」

お父さんやお母さんからこのように言われた(もしくは言った)人は多いと思います。今回のブログを読んでもらって、姿勢が【足】と【目】と【耳】からの感覚を元に、脳によって無意識に作られていることはご理解してもらえたかと思います。

何度も言いますが姿勢は意識して作るものではなく、運動によって無意識に作られるものです。つまり、運動経験や運動習慣の積み重ねの《結果》として現れたものが姿勢です。
今まで説明した内容を踏まえた方法であれば、基本的にはどのようなアプローチの仕方でも構わないと思いますが、僕がよく使うアプローチ方法としては赤ちゃんの動きの「ハイハイ」や「寝返り」動作です。赤ちゃんは生まれてから約1年かけて立つことができるようになります。この1年でハイハイや寝返りのような全身から感覚を得るような運動を行なうことで【足】や【目】や【耳】から刺激を入れて脳と身体を成長させています。

姿勢や動作の基本もまずは「真っ直ぐに立てる」ことです。
もしご自身でどうやって運動をすればいいのか分からない方、一人では限界があると感じた方は一度BCFにトレーニングに来てみて下さい。皆さんの悩みを解決する為に全力でサポートさせてもらいます。

少し専門的な内容で分かりにくい部分もあったかと思いますが、質問等あればいつでもお気軽にご連絡下さいね。

 

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